うつ病と聞くと、真面目で責任感の強い人がかかりやすく、倦怠感や無気力感、孤独感といった精神的症状と、ときには頭痛や腹痛といった身体的症状を伴う病気というイメージがあります。気力や活力の低下は朝から晩まで常に続き、まるで終わりのないトンネルの中を彷徨っている感覚です。今まで活動的だった人も突然あらゆるものに興味をなくし、身だしなみにも気を遣わなくなり、周囲の人から見ても明らかに具合が悪そうと分かります。そんなうつ病とは性質の異なる新型うつ病というものが最近現れています。新型うつ病は、日常生活を普通に送っている間は特に何の問題も無く過ごせますが、強いストレスが加わったり嫌なことをしなければならないときになると意欲の落ち込みなどの抑うつ症状が強く現れるというものです。好きなことや気にならないことをしているときは平気で嫌なことをしているときだけ気持ちが落ち込むのは誰だって当たり前だ、それを病気として休もうとするのは甘えやわがままだという声も残念ながら多く聞かれてしまいます。しかし、新型うつ病では嫌なことをしているときに現れる抑うつ症状がごく一般的に感じ得る程度を超え、まったくの無気力になったり体をうまく動かせなくなったり、感情のコントロールができなくなることがあります。このときに周囲が、度を超えたわがままだと感じて強く注意したり呆れて放置したりすると、適切な助けや治療を受けられないまま症状が悪化していく可能性があります。新型うつ病は、うつ病と異なり好きなことに対しては意欲的です。また食欲もあり、甘いものを欲しがる傾向があります。これだけ見ると病と気付かれにくい側面を持っており、本人もストレスが溜まっているとか疲れからきていると判断し病院へ行こうとは考えづらいのが難点です。新型うつ病の原因ははっきりと分かっていませんが、ひとつには脳の機能低下が挙げられます。感情の起伏などをコントロールする部位への血流量が減少し機能が低下すると、ちょっとしたことでもすぐにイライラしたり悲しくなったりと感情のスイッチが浅くなります。または逆に感情のスイッチの感度がにぶり、意欲の低下が起こります。体を動かして血液循環を改善するなどの方法が効果的と言われていますが、うつ病ほど認知されていないためまずは自分で異変に気付き病院へ行って診断を受けることが大切な最初の一歩となります。新型うつ病の治療は、抑うつ症状が出てしまう嫌な作業を嫌な気持ちを切り離す学習が必要です。嫌だと感じる作業を行っても辛いことは起こらない、例えば上司に怒られたり同僚に嫌味を言われたりすることなく無事にタスクを完遂することで、この作業は自分にとってそんなに嫌な作業ではないということを教え込ませます。これを繰り返すことで、この作業に取り掛かっても抑うつ症状のトリガーとなる嫌な気持ちは起こらないことを学習するのです。